高橋正夫先生のご逝去を悼んで
2022/09/08
高橋正夫先生のご逝去を悼んで
新潟大学名誉教授で、本学会名誉会員である高橋正夫先生が本年7月3日にご逝去されました。慎んでご冥福をお祈り申し上げます。
本学会理事・元会長である神奈川大学の髙橋一幸先生と、中教出版株式会社で教科書編集を担当された山城顕子様から、先生の思い出をいただきました。以下に掲載させていただきます。
会長 加賀田哲也
<髙橋一幸先生より>
高橋正夫先生は、平成元年(1989年)に英授研を設立した際の発起人のお一人であり、長年にわたり理事をお勤めくださり、定年後は名誉会員として学会の発展に貢献され、後進をご指導くださいました。新潟大学では、数多くの英語教員を育てて中高の教育現場に送り出されました。
先生には、英授研全国大会や関東支部・関西支部研究大会でお話を伺う機会が多くありました。特に英授研創成期10年間の第1回~第10回全国大会の記録を見ますと、第8回大会での「国際科と英語教育」をテーマにご講演いただいたほか、シンポジスト6回、授業分析者1回と、10回中8回もご登壇いただきました。先生はとても庶民的で親しみやすいお人柄で、若い先生方にも気さくに声をかけてあたたかく助言してくださいました。「近所のおっちゃん」という感じの親切で気さくな方でしたが、お話を伺ったり教科書執筆のお仕事をご一緒したりすると、その学識の深さに感銘を受けたものです。先生の知識や理論は、ご自身の現場での実践経験や学校教育への密接な関わりに裏打ちされた地に足着いたものでありました。まさに英授研の礎を築いてくださった「学会育ての親」のお一人です。ある大会でのシンポジウムでは、お手製の指人形を持ってこられ、それを手にはめてお話しされたことがありました。そんな茶目っ気もある、昭和・平成の日本の英語教育史に名を刻む偉大な先生でした。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
<山城顕子様より>
高橋正夫先生とは、中学校検定教科書EVERYDAYの編集会議でご一緒させていただきました。編集会議では、錚々たる著者陣の発言の意図を汲んで、常に静かに進行を見守ってくださいました。会議が煮詰まった時には、問題になっていることの本質を端的に整理して代替案を出してくださいました。大学教授でありながら、まるで中学校現場に今でもいらっしゃるのでは、と思うほど生徒の視点でご発言をされ、英語に苦手意識のある生徒のことも常に配慮されていたことが印象に残っています。また正夫先生は絵心がおありで、会議の途中で一筆書きを描いてみせてくださったことなどを思い出します。教科書以外の冊子での執筆をお願いすると、いつも快くお引き受けくださいましたが、正夫先生には〆切後の督促をした記憶がございません。
何年か前のお正月に、今年で年賀状のやり取りを失礼させていただく、とのお葉書をいただいてからは文字での交流もなくなっておりました。亡くなられたことを全く存じ上げず、残念すぎて気持ちの行き場がない状態です。長きにわたるご執筆や日本の英語教育界におけるご貢献に心から感謝し、遅ればせながらご冥福をお祈り申し上げる次第です。